2013.11.08

ユニークな製品は、お客さまの声と遊び心から生まれる。

小さいふ ポキート

極小皮財布 小さいふ ポキート

 
靴作りを断念して革小物へ。
海外で働いていた中辻さんと渚さんは25歳のとき帰国。日本でなにをしようかと考えて思いついたのが、渚さんがイタリアで学んでいた「靴作り」だった。
知り合いに紹介されたミシン屋さんで中古のミシンを購入することになった。すると偶然にも、お店はその日で閉店するという。店のオーナーから「革がたくさん残っている。よかったら持って帰らないか」と声をかけられた。その量、なんと軽トラック1台分。それが二人の革との出会いだった。
ところが持ち帰ってよく見ると、その革は靴には向かない部位であることがわかった。しかも、調べていくうちに靴作りにはかなり高いハードルがあることを知った。仕方なく靴作りは断念。革小物へ方向転換した。それから二人の試行錯誤が始まった。靴に関しては多少の知識があるとはいえ革小物はほぼ素人だ。革の裁断、縫製を失敗しては学び、学んでは失敗し、商品が完成すれば路上や手作り市、フリーマーケットなどで販売する日々が続いた。

 

そうだ色で遊ぼう、と決めた老人のひと言。
「路上で売っているといろんな人と出会うんですね。同業者から売れ筋を教えてもらったり、お客さんからはこんなのが欲しいとリクエストされたり。そういう情報ややりとりの中からヒントや改善点を見つけることが多いんです。今でもそういう生の声はいちばん大事にしています」。
黒や茶色が主な革小物の世界で『クアトロガッツ』の商品が色とりどりなのも、あるお客さんのひと言がきっかけだった。当初は、手持ちの革に色物が多かったので、道行く客の足を止めるくらいのつもりでカラーバリエーションを揃えていたという。するとある日、一人の老人が足を止めた。「おじいさんが“君たちは色師やね。”といったんです。色の世界で遊んでいて、見ているだけで楽しいと。その色師って言葉が気に入って、よし、僕らは色師になろうと、カラーバリエーションをどんどん増やしていくことにしたんです」と中辻さんは語る。
その甲斐あって、徐々に商品が売れ出した。現在の「小さいふ」の原型が生まれたのもその頃だった。

 

日常生活からアイデアが生まれる。
いまや『クアトロガッツ』の代名詞ともなった「小さいふ」が誕生したのは、ポケットに入れてもじゃまにならない小さな財布が欲しいと試しに作ったのがきっかけだった。小銭とお札が入れられるだけのシンプルなものだった。 “ピッコロ(小さい)”と名付けて売り出した。そこからお客様の意見を取り入れながら試行錯誤を重ねて、現在の“ポキート”まで少しずつ進化させた。「現状のサイズがギリギリですね」という。
日常生活で必要かどうか、という視点から生まれる中辻さんのアイデアを元に、奥さんの渚さんがデザインを起こし、それを中辻さんの弟である晃生さんをはじめとした少人数のスタッフが裁断、縫製、仕上げを行なう。まずは試作品を作り、自分たちで使ったり、路上や市で販売し、ダメ出しを受け、改良点を見つけ、また作り直して販売する。それを繰り返す。やっと完成系となると色のバリエーションで遊んでみる。それが『クアトロガッツ』の商品開発だ。
作り続けるうち、革そのものも見なおした。薬品で仕上げるクロムなめしの革は、土に埋めても分解されず、燃やすと有毒な六価クロムが発生するというのを知ったからだ。ミモザの渋で仕上げるタンニンなめしに変えた。この革なら燃やしても有害物質が出ることはない。
いま多くの人から『クアトロガッツ』の商品が高い評価を受けているのはなぜか。中辻さんに聞いた。「少数精鋭、それに何より、スタッフを信頼していることがいいカタチになっているのではないでしょうか。それと根本にあるのが“遊び心”やと思います。これだけは始めた頃からずっとブレてないです」。
最近は、高島屋や雑誌ananなどとのコラボレーションを試みたり、WEBではカラーオーダーの受け付けも始めた。さらに、ダリやピカソの作品をモチーフにした小さいふも製作した。遊び心が次々と新しいものを作っている。

 

ネパールの子どもたちに学校を。
事業が順調に進んでいると思われる中辻さんに将来の夢を聞くと意外な答えが返ってきた。
「路上販売の頃に知り合ったチベット人の友人とネパールを訪れたことがあります。ネパールでは障がいのある子どもは、恥ずかしいからと家に隠しておくという慣習があることを知ったんです。凄くショックでした。その子どもたちは学校にも行かせてもらえない。友人が子どもたちを学校に行かせようと活動しているのを見て、自分もその手伝いができたらと思いました。いまのところ細々としたボランティア活動ですが、いつかネパールに学校を建てて、僕らの技術を教えて、社会に出してあげることができたらと思っています」。
手にすっぽりと隠れるほどの小さな財布の奥には、大きな大きな試みと、努力、夢が詰まっていた。
 
クアトロガッツ(株式会社 ガッツ) http://quatrogats.com/

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